WE LOVE 農

2018年

飽くなき向上心と まっすぐな気持ちでバラと向き合う

神戸町斉田 戸川 剛さん優子さん

神戸町斉田で、バラの栽培を手掛ける戸川剛さん(46)と妻の優子さん(43)。収量より品質を重視した栽培を心掛け、産地の維持、発展に貢献しています。

剛さんは、介護福祉士として働いていた頃に、優子さんと知り合い31歳の時に結婚。婿養子として、優子さんの実家の家業であったバラ栽培を継ぐことになりました。農業経験が全くなかったため、就農当初は、優子さんの父や町内のバラ農家、他産地の農家などと積極的に情報交換。また、自分流の栽培技術を早く身につけるため、優子さんの父からハウスの一角を借り、夜遅くまでバラ栽培について研究を重ねてきました。

重視していることは、“量”より“質”を追求すること。今では作業時間の7割を栽培管理に費やしています。周りの農家からも「ハウスにいる時間が長くなったね」と声をかけられる機会が増えたそうです。バラは病気にかかりやすい植物のため、予防が欠かせません。農薬の散布はもちろん、温度や湿度、養液の管理などに気を配りながら、栽培管理を徹底しています。また、20品種あるバラそれぞれが生育しやすいよう、品種ごとに仕立て方も使い分けています。剛さんは「とにかくバラと正直に向き合うことを大切にしている。そうすれば、バラも品質で応えてくれる」と語ります。

剛さんの努力はバラの単価にも反映され、市場でも高い評価を受けています。そのことも剛さんのバラ栽培へかける情熱をかき立てています。「やはり第三者から評価してもらえることはうれしい。まだまだ上を目指さなければいけない」と意欲を見せます。

そんな剛さんに全幅の信頼を寄せているのが優子さん。農業を始めた当初は、「本当に農業でやっていけるのか」と不安を抱えていましたが、剛さんが経営のことも考えて懸命にバラに向き合う姿を見て、そんな気持ちも吹き飛んだそうです。

戸川さん夫婦は「神戸町は県内でも有数のバラの産地。花業界は厳しい状況にあるが、産地の発展に向け、夫婦力を合わせて高品質なバラ生産に力を注ぎたい」と力強く話してくれました。

(2018年12月号)

バラの花束を宅配便でお届け

クリスマスにいかが

戸川さんも所属する神戸町バラ生産組合では年間を通じてバラの花束の宅配サービスを行っています。クリスマスも近いので、大切な人にバラを贈りませんか。混合色13本入り、箱入り、メッセージカード付、送料込のお得なセットです。

価格 5,000円(税込み・送料込)
問・申込先 JA下宮支店 電話:27-2202

トマト作りの技術親から子へ 切磋琢磨しさらなる高み目指す

海津市海津町日原 福島 正巳さん紳太郎さん

海津市海津町日原で、冬春トマトの栽培を手掛ける福島正巳さん。今年、長男の紳太郎さんが就農し、家族で農業ができる喜びをかみしめています。

正巳さんは、農業歴45年の大ベテラン。所属する海津トマト部会では、過去に副部会長を務めるなど、周りからも厚い信頼が寄せられています。正巳さんは長年、トマトと真剣に向き合い、適期作業を徹底することで、病害虫からトマトを守り、高品質なトマトの安定出荷を実現してきました。「トマトの表情は毎日変わる」と話すように、トマトの状態は必ず毎日確認し、どんな小さな変化も見逃さないように心掛けてきました。

農業経営に対しても高い意識を持ち、品質だけを追い求めるのではなく、収量にも強いこだわりを持ってきました。強い意識は結果にも表れ、収量は毎年安定して10アール当たりで20トン以上を記録してきました。それでも「毎年目標にする収量は25トン」と話すように現状には満足していません。

高い志を持つ正巳さんに今年、心強い味方ができました。長男の紳太郎さんの存在です。紳太郎さんは、JA職員として働いていましたが、幼い頃からの夢だった農家に転身することを決意。海津市にある研修施設「岐阜県就農支援センター」で約1年間トマト栽培について学び、今年就農しました。紳太郎さんは、研修施設で学んだ「独立ポット耕栽培」という新しい栽培システムでトマト栽培に挑戦します。

栽培方法こそ違いますが、紳太郎さんのお手本は父の正巳さん。栽培に関して分からないことがあれば、正巳さんに相談しています。紳太郎さんは「理想とする農家像は父。父のように高い意識と広い視野を持った農家になりたい」と語ります。

10月8日には紳太郎さんが栽培したトマトが初出荷を迎えました。正巳さんによると、紳太郎さんは初出荷するトマトを嬉しそうに、写真におさめていたそうです。「トマトが無事成長し、出荷できた瞬間の喜びは何事にも替え難い」と口をそろえる二人。これからは親子でトマトに愛情を注ぎながら切磋琢磨し、プロ農家としてのさらなる高みを目指します。

(2018年11月号)

紳太郎さんが手掛ける独立ポット耕のトマト
中玉トマト「フルティカ」も自慢の品種

トマトの加工品が自慢 売れる喜びやりがいに

女性部加工グループ おいでん海津

JA女性部の加工グループ「おいでん海津」は、トマトなど地元農産物を使った加工品を毎月1回(第4土曜日)ファーマーズマーケット海津店で販売し、地産地消を広めています。その他にも、農業祭や地域のイベントへ積極的に参加。消費者との交流を楽しみながら、地元海津の味を発信しています。

グループは平成26年11月に結成。グループの名前「おいでん」には、「来てください」の意味があり、多くの人に自分たちの加工品を食べに来てもらい、海津を盛り上げたいというメンバーの強い思いが込められています。

グループ自慢の商品は、海津市特産の冬春トマト「美濃のかいづっ子」を使った加工品です。なかでもトマトカレーとトマト寒天はグループの人気商品になっています。トマトカレーは女性部の「ふれあいフリーマーケット」や海津区域の農業祭、トマト寒天は第4土曜日にファーマーズマーケット海津店で販売しています。

カレー、寒天とも開発の段階でこだわったのが、水を使わずトマトの水分だけを使うことです。どちらの商品もトマトの水分が少し違うだけで味に影響が出てしまうため、配合を決めるまでに時間がかかったそうです。こうした苦労を重ねながら、カレーはトマトの酸味がカレーのコクと辛さにマッチした商品に、寒天はつるっとした食感に加え、口どけの良い商品に仕上げることに成功しました。

メンバーにとって、何度も試作を重ねた商品が売れる瞬間が何よりも嬉しく、やりがいにつながっているそうです。売れる喜びがメンバーの意識を変え、「自分たちのための活動」から自分たちの加工品を楽しみに待っていてくれる「消費者のための活動」に変わりました。

代表の佐藤啓子さんは「チームワークの良さが私たちの売り。これからも地域のための活動を展開しながら、ファーマーズマーケットでの販売回数や加工品の種類を増やし、グループ活動を発展させていきたい」と意気込みを話してくれました。

(2018年10月号)

グループ自慢のトマトカレーとトマト寒天

「おいでん海津」新メンバー募集中!!

活動内容 基本的な活動は月2回。ファーマーズマーケットでの販売(毎月第4土曜日)と新商品の開発に向けた試食会。その他、農業祭や地域イベントへの出店。
お問い合わせ 海津中支店 電話:0584-53-1133

自家育成で牛の管理を徹底 耕畜連携進め地域へ恩返し

海津市平田町三郷 森島 ひろよしさんそうさん

海津市平田町の千代保稲荷神社近くで酪農を営む森島牧場3代目代表の森島広好さん(52)。長男の壯太さん(25)ら家族と従業員を合わせた5人で、仔牛と母牛約160頭を飼育しています。

森島牧場で飼育されている牛は100%自家育成です。自家育成とは、牧場内で種付け・出産・哺育・育成を一貫して行う方法のこと。広好さんは自家育成型にした理由を「生まれた時から手をかけているため、牛との信頼関係を築きやすい。それに岐阜県の暑さにも慣れさせることができる」と語ります。

それでも今年の夏のような猛暑になると、乳量は落ちるそうですが、牛舎の屋根に遮熱塗料を塗ったり、搾乳を待つ間の待機場の天井にシャワーを設置したりして暑さ対策を徹底しています。こうした対策のおかげで、1頭当たりの乳量は1日平均30キロを、年間を通じて確保できるようになりました。

管理面で意識していることは、毎日牛を観察し、飼料を吟味し、牛を健康に保つことです。牛の体調は、お腹の張り、目などを見て確認。歩数、乳量なども毎日データをとって体調の変化に気をつけています。飼料は自家配合にこだわり、近隣の河川敷で栽培した牧草と遺伝子組み換えを一切してない安全・安心なトウモロコシなどの穀類を牛の体調に合わせて配合しています。

安定した経営へ向け心強い味方もできました。昨年夏に就農した壯太さんの存在です。壯太さんは酪農に対して懸命に向き合う父の姿を見て、小さい頃からこの仕事に就くことを決めていました。今は目標とする父の背中を追いかけ日々牛と向き合っています。

広好さんは、地域への感謝も忘れません。38歳で父親を亡くし、仕事が大変だったころ、地域の方々にたくさん助けてもらったからです。その恩を返すため、昨年地域で立ち上がった農事組合法人「大空」の役員として、耕畜連携の取り組みを進めています。具体的には、牧場の堆肥を米・麦・大豆の栽培に活用。実際に反収もそれぞれの作物で海津市の平均を1俵(60キロ)ほど上回るなど効果も現れてきています。広好さんは「息子の代になっても継続して酪農をやっていけるように、今できることを全力で取り組んでいきたい。地域への恩返しも忘れず、地域農業の発展に貢献できれば」と今後の目標を話してくれました。

(2018年9月号)

自家育成で元気に育つ森島牧場の乳用牛

水管理重点に苗づくり 夫婦力合わせ安定出荷めざす

神戸町斉田 髙田 慎二さんさん

神戸町斉田の髙田慎二さんは管内で唯一のサラダほうれん草農家。妻の愛さんとともに12アールのハウスで、サラダほうれん草の水耕栽培を手掛け、中京、北陸市場へ出荷しています。

実家がバラ農家の慎二さん。専門学校を卒業後、一般企業に就職しましたが、小さい頃からの憧れだった農業の夢を捨てきれず就農しました。「新しい形の農業に挑戦したい」と、施設園芸が盛んな同町でも珍しいサラダほうれん草の水耕栽培にチャレンジ。研修生として群馬県の農業法人で経験を積み、水耕栽培の技術を身に付けました。

高品質、安定生産のために重視するのは苗作りです。日々の気温や日照時間に合わせて適切な水管理を心がけています。特に夏場は気温が高くなるため、1日2回の水やりは欠かせません。小まめに苗の状態を確認し、水を打つタイミングや量を見極めています。「苗づくりは栽培の7割を占めると言っても過言ではないほど重要な作業。土台がしっかりしてこそ良いものができる」と強調します。

栽培する品種は6品種。季節に合った品種を選定しながら栽培を行っています。「アクが少なく柔らかいのがサラダほうれん草の特徴。契約出荷もあるため1年を通してコンスタントな出荷ができるよう工夫している」と話します。大垣市内の飲食店では、サラダほうれん草の味と品質が評価され、来店者へのお通しとして提供されています。

愛さんとは学生時代、共通の友人を介して知り合いました。卒業後も順調に交際を続け、就農3年目の平成11年に結婚。農業経験はない愛さんですが、種まきや定植、収穫などの作業を担当し、仕事の合間に家事をこなすなど慎二さんをサポートしています。

家族の支えもありながら、農業に全力疾走する慎二さん。「1年1年が勉強の連続」と謙遜しますが、「自分で進むと決めた農業の道。妥協せず消費者に喜んでもらえる品質を追求し、農業者として成長していきたい」と意欲を燃やしています。

(2018年8月号)

「ロックウール」と呼ばれる水耕栽培で育成されるサラダほうれん草

地元農産物を広めたい アイデアたっぷりの加工品を開発

(左から)寸田 富士子さん、清水 ユカさん、戸川 千恵さん、矢野 京子さん、坪井 章子さん、寸田 ひとみさん

神戸町 しもみやレディース

ハウスを利用した施設園芸が盛んな神戸町。小松菜、グリーンねぎ、水菜といった野菜が周年で栽培されています。そんな神戸町の野菜をたくさんの人に食べてもらおうと、消費拡大に取り組むのが農家の奥さん6人で構成する「しもみやレディース」です。JA女性部が主催するふれあいフリーマーケットや支店まつり、農業祭、町のイベントなどに出店して数々のアイデア料理を販売しています。

グループが結成されたのは3年前。グリーンねぎを薬味だけでなく、料理の主役として使ってもらおうと、料理のレシピを考え始めたのがきっかけでした。そこから「手間なく簡単に作れるおいしいレシピ」をコンセプトに、料理の開発を進め、数々の試作を繰り返して、ようやくメンバーが納得する料理が誕生しました。それが「グリーンねぎカレー」です。「グリーンねぎカレー」は現在もグループの定番料理として人気を博しています。

しかし、現在のカレーになるまでには数々の苦労がありました。一番こだわったのは、カレーの色です。ネギ本来のきれいな緑色を出すために、何度も改良を重ね、最終的にホワイトカレーのルウを使うことで、より鮮やかな緑色を出すことに成功しました。調理工程では、ネギを炒めるときにバターを入れることで、コクを出し、老若男女に好まれるやさしい味に仕上げました。「ネギの個性が活きた料理。ネギたっぷりでヘルシーなのも自慢」とグループリーダーの清水ユカさんは自信を見せます。

神戸町下宮地区は、小松菜、グリーンねぎ、水菜などを組み合わせて栽培する農家も多く、農作業は1年間を通じて多忙です。その中で、メンバーはなんとか時間をやりくりしながら活動しています。サブリーダーの戸川千恵さんは「産地のために役に立ちたいと思い続けている。たくさんの人に神戸町の野菜を知ってもらいたい」と強調します。

最近は、小松菜を使ったマフィンを新たに開発し、スイーツの分野にも挑戦するなど、活動の幅を広げています。メンバーにとってグループでの活動は、いろいろな出会いと学びにつながって楽しいそうです。「これからも私たちらしく明るく楽しく活動し、若い仲間を増やしながら産地を盛り上げていけたら」と声をそろえて話してくれました。

(2018年7月号)

色鮮やかなグリーンねぎカレー

強い絆で結ばれた親子 米作りで二人三脚

苗の状態を確認する覚さん(右)と誠哉さん

大垣市上石津町下山 森澤 覚さん誠哉さん

大垣市上石津町時地区で、水稲の担い手として活躍する森澤覚さん(67)。生まれは同町ですが、自宅は岐阜市内にあるため、繁忙期以外は、自宅と同町下山にある工場こうばを往復しながら、米作りに励んでいます。

大学卒業後、岐阜市内の会社に就職し、サラリーマンとして働きながら、実家の米作りも主で行っていた覚さん。年々預かる農地も増え、兼業のままでは農業に尽力するのは難しいと、10年前に会社を辞め、専業農家となりました。

現在は、地元の米生産者10人で構成する「ときのひかり生産組合」の一員として、15ヘクタールの水田で「コシヒカリ」と「あさひの夢」を栽培するほか、奇跡の米とも呼ばれる「龍の瞳」を下呂市の会社との契約で栽培しています。工場には、年間約4000俵(1俵=60キロ)もの米を扱うという乾燥機が14台あるほか、最新の色彩選別機やもみすり機なども整備されており、種まき、育苗、田植え、稲刈り、乾燥調製までをすべて自分の手で行っています。

同町時地区は標高約200メートルで昼と夜の寒暖差が大きく、きれいな水にも恵まれています。そんな環境を生かし、おいしい米作りに重点を置く覚さんは、肥料にこだわり、化学肥料は一切使わず、有機肥料のみで栽培を行っています。新しい技術にも積極的に挑戦し、5年ほど前から疎植栽培も取り入れています。

そんな熱心に米作りを行う覚さんに強く憧れていたのが長男の誠哉さん(20)です。毎日自宅と工場を往復しながら、農業にチャレンジする父の姿を見て、高校2年生の頃には、農業の道に進むことを決めたそうです。高校卒業後すぐに親元就農し、父の背中を追いかけています。覚さんも誠哉さんを優しく見守り、今では一連の作業を一人でこなせるようになりました。繁忙期には工場に親子2人で寝泊まりしますが、料理や洗濯などの家事は誠哉さんが進んで担当してくれるそうです。

覚さんは「近い将来、息子とどっちがおいしい米をつくれるか競争したい。二人で切磋琢磨しながら、この地域の農業を守っていければ」と話しています。誠哉さんも「父の技術を少しでも盗み、早く一人前の農家になって、この地域のお米をたくさんの人に広めていきたい」と目標を語ってくれました。強い絆で結ばれた親子。“おいしい米”を追求する二人の挑戦はこれからも続きます。

(2018年6月号)

たくさんの米を扱えるように大型乾燥機も整備されている

親子3人でトマト作り こまめな管理で“質”を追求

左から松永 春男さん、たい子さん、友和さん

養老町大場 松永 春男さんたい子さん友和さん

養老町大場で冬春トマトの栽培を手掛ける松永春男さん(67)。池辺園芸トマト組合の一員として、妻のたい子さん(64)、長男の友和さん(41)とともに、ハウス28アールで同組合のブランドトマト「養老育ち」を栽培し、岐阜市場へ出荷しています。

トマト農家の長男として生まれ、25歳で就農した春男さん。トマト栽培歴は40年以上になります。大切にしていることは量より質にこだわったトマト作りです。そのため、基肥を多めに入れる土づくりや、生育初期のこまめな水管理、丁寧な葉かきなど基本となる栽培管理を徹底しています。「木のバランスが良くないとおいしいトマトはできない。自分に妥協せず毎日トマトと向き合うことが大切」と話します。

昨年6月には、調理師をしていた友和さんが就農し、後継者ができました。現在は、早く一人前のトマト農家になってもらうため、自身の経験を友和さんに伝えています。2人でハウスに行き、コミュニケーションをとりながら、栽培管理や経営について語り合う毎日。春男さんは「若い視点でアドバイスをくれるので助かっている。いろんな経験をして早く一人前になってほしい」と期待しています。友和さんも「目指すは親父の背中。そしていずれは追い越したい」と意気込みを語ります。

友和さんが就農したことで春男さんにも変化が生まれています。たい子さんは「それまで口数が少なかった夫が笑顔を見せるようになり明るくなった。家族間の会話も増え、楽しく農業ができている」と話します。また、設備投資に消極的だった春男さんを友和さんが説得。チューブ灌水装置を導入し、トマトの安定した品質の確保や作業の効率化につなげました。

栽培経験豊富な春男さんと新しい技術を取り入れることに積極的な友和さん。2人の力の融合で相乗効果が生まれ、春男さんが目指す“量より質を追求するトマト作り”にもより一層力が入っています。「消費者の『おいしい』の一言が励みになる。これからもこの3人でみんなに愛されるトマトを届けていきたい」と春男さんは力強く話してくれました。

(2018年5月号)

産地DATA「冬春トマト」

冬春トマトの写真
産地 海津市、養老町、輪之内町
生産組織 海津トマト部会、池辺園芸トマト組合、輪之内園芸組合トマト部会
出荷期間 10月~翌年7月
出荷数量 4965トン(平成29年度実績)

産地を守る強い決意 自分たちが次の世代につなぐ

右から神野 高規さん(32)、三輪 明久さん(32)、安立 博臣さん(36)

海津胡瓜部会青年部

冬春キュウリの県内最大の産地である海津市。そんな一大産地を支えているのが海津胡瓜部会です。生産者36人が9.4ヘクタールのハウスで栽培し、岐阜や四日市市場へ出荷しています。

部会では、若手生産者の活躍も目立ち、青年部には20代~30代の部員6人が所属。先進地への視察研修や県農業フェスティバルでの販売活動、土壌診断などを行い、部会に貢献しています。

青年部で部長を務めるのが、神野高規さんです。4年間部長を務めていた安立博臣さんから今年度大役を引き継ぎました。神野さんは「正直まだ何をしたらいいか分からない」と苦笑いしますが、「先輩生産者と若手生産者がコミュニケーションを取りやすいように、自分が橋渡し役になれれば」と意欲を見せています。

青年部では昨年12月、JGAPに取り組む滋賀県の「浅小井農園」を視察しました。部会で県GAPの認証取得を目指していることもあり、GAPの取り組みについて理解を深めました。神野さんは「GAPは持続可能な農業を推進していくために欠かせないもの。自分たち若手が積極的に動き、部会での普及を目指したい」と話しています。

子どもたちに地元産キュウリを知ってもらうためのイベントも行っており、毎年4月19日の「良いきゅうりの日」には、海津市の学校給食にキュウリを寄贈し、児童と一緒に給食を食べています。昨年、児童と一緒に給食を食べた安立さんは「子どもたちが笑顔でキュウリを食べている姿を見ると励みになる。こうした取り組みをきっかけに“地産地消”が広がっていけば」と期待しています。

部会では現在、後継者不足という課題に直面しています。青年部でも危機感を募らせており、新規就農者が入りやすい環境づくりを進めたいと考えています。神野さんは「今までは先輩生産者に頼っていればよかったが、あと数年して先輩生産者がいなくなれば今度は自分たちがやらなきゃいけない。次の世代に魅力ある産地として引き継いでいけるように、今から何ができるかを考えていきたい」と強い思いを語ってくれました。

(2018年4月号)

産地DATA「冬春キュウリ」

冬春キュウリの写真
生産組織 海津胡瓜部会
部会員数 36人
栽培面積 ハウス9.4ヘクタール
栽培品種 「極光」「千秀」
出荷量 年間40万ケース(1ケース=5キロ)

牛の体調を見極めおいしい牛乳作りに励む

右から川瀬 明久さん、きみ子さん、慶さん、誠さん、熊崎 遥さん

海津市平田町三郷 農事組合法人 川瀬牧場

海津市平田町三郷で酪農を営む農事組合法人川瀬牧場。平成27年3月に法人化し、代表理事の川瀬明久さん(61)を中心に、妻のきみ子さん、長男の慶さん(32)、次男の誠さん(28)、従業員の熊崎遥さん(22)さんの5人で、乳牛80頭と乳牛用の子牛53頭を飼養しています。

「自然に近い状態でストレスなく飼ってあげることが、おいしい牛乳作りにつながる」と話す明久さんは、牛をつながず、牛が自由に牛舎内を歩き回ることができる「フリーストール牛舎」と呼ばれる方法で管理を行っています。この方法は牛にストレスがかかりにくい反面、個体の管理が難しく牛一頭一頭の体調を見極めることが重要になるため、明久さんは毎日搾乳する際に、牛の動きや毛づや、目元などを見て牛の体調をチェックしています。管理の「見える化」も進めており、万歩計を活用した歩数や搾乳量のデータもとって日々牛の体調の変化に気を配っています。明久さんは「酪農は生き物が相手。ほんの少しの体調の変化でも見逃してはいけない」と話します。

自給飼料の栽培や耕畜連携にも積極的に取り組んでいます。自給飼料の取り組みでは、市内の酪農家と共同で、揖斐川と牧田川の河川敷で牧草を育てています。また、地元の耕種農家とは耕畜連携の一環で、稲わらの供給を受ける一方、牛ふんを発酵して堆肥にし提供しています。「地域の方々の協力のおかげで酪農を経営できている部分もある。これからも地域とのつながりを大切にしていきたい」と語ります。

牧場近くにある千代保稲荷神社では、牛乳の魅力を広めたいと、妻のきみ子さんがアイスクリーム店を経営しています。牛乳本来の味が楽しめるミルクアイスなど10種類以上のジェラートを販売し、観光客をもてなしています。

慶さん、誠さんという後継者もでき、さらなる経営の強化を図る明久さん。自動哺乳ロボットが付いた子牛の保育牛舎の建設も進めており、「息子たちが将来にわたって酪農を経営していけるよう、自分の代でしっかり基盤を固めたい」と力強く話してくれました。

※耕種農家
土を耕し作物を育てる農家

(2018年3月号)

きみ子さんが経営するアイスクリーム店「ケルン」

「ケルン」とは、登山の際などに道しるべとして石を円すい型につみあげたもののこと。地元の道しるべになるように明久さんが命名した。千代保稲荷神社の参道の東側(本店)と南側(二号店)に店舗を構える。

独自の液肥でこだわりの味を追求

大垣市福田町 伊藤 なおさんさん

大垣市福田町でイチゴの高設栽培を手掛ける伊藤直弥さん(44)は、平成28年に就農したばかりの期待の若手農家。妻の志保さん(44)、両親とともに、19アールのハウスで「濃姫」を栽培しています。

子どもの頃から昆虫や植物を育てることが大好きで、将来は農業の道に進みたいと考えていた直弥さん。一旦は市内の企業に就職しましたが、「一度きりの人生だから後悔したくない」と農家への転身を決意しました。43歳でJA全農岐阜いちご新規就農者研修所に入所。研修所では1年2カ月かけてイチゴ栽培について学び、多くの知識を身につけました。「研修中は失敗から多くを学び、自分を成長させてもらった」と振り返ります。

就農後のモットーはみんなに愛されるイチゴを作ること。そのため、イチゴの味にはとこトンこだわっています。その特徴的な取り組みの一つが液肥の管理で、直弥さんは県内のイチゴ農家でも珍しい独自に配合した液肥でイチゴを管理しています。地下水の成分を調べ、液肥の配合を調整。そして配合を変えるたびに試食をし、この地域の気候風土にあった理想の液肥を追求しています。「イチゴ農家になったからには自分にしか出せないイチゴの味にこだわりたかった。今も甘み、コク、酸味のバランスが整ったイチゴを目指している最中」と話しています。

志保さんとは、サラリーマン時代の平成11年に結婚。以来、志保さんは、看護師の仕事を辞め、イチゴの収穫やパック詰め、経理事務などで直弥さんをサポートしています。志保さんは「いつもイチゴのことを考えていて尊敬する」と直弥さんについて話しています。

家族のサポートもあってイチゴ農家として順調なスタートを切った直弥さん。念願だった直売所「なおファーム」も1年前にオープンし、販売面にも力を注いでいます。今後については「6次産業化が今の夢。ジャムやアイスクリームを開発して販売したり、将来的には農カフェを経営してみたい」と、早くも次の目標を見据えています。

※直ファーム
住所:大垣市福田町8(岐阜日産大垣赤坂店すぐ南)

(2018年2月号)

産地DATA「イチゴ」

イチゴの写真
産地 大垣市、輪之内町、海津市、養老町
生産組織 大垣市いちご組合、輪之内園芸組合いちご部会、海津苺部会、平田町苺園芸組合、池辺いちご組合、養老西部いちご部会
出荷期間 11月下旬~5月中旬
出荷数量 78トン(平成28年度実績)

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